『咬合病の治療』
二年間お世話になったこのコラムも、今回で最終回になりました。そこで、私の治療の原点である咬合病治療について出来るだけ判りやすく簡単にお話します。
原因不明の体調不良や顎関節の不調を、顎関節症とか咬合病といわれますが、咬み合わせ不良が原因の場合が多いのです。歯に詰め物やかぶせたり、歯を抜けたまま放置していた結果、他の歯に比べて一本だけの歯が何ミクロンという微小な単位で少し突きだして高くなります。そうすると、左右の奥歯で咬みしめたり、左右に下の顎をかみしめたままギシギシ滑らせた時に、その高く飛び出した歯が、奥歯を左右同時に咬みしめたり、スムーズに下顎を動かす事を邪魔するので、そのことにより左右の筋肉のバランスが崩れたり顎関節の開け閉めがうまく出来なくなったりして、咬合病を引き起こすのです。
又、入れ歯が入っていると左右の顎のズレ、咬み合わせの高さの変化が加わって、更にやっかいで複雑になります。そこで治療方法の説明です。先ず、どの歯が飛び出しているか見付けます。その時に使われるのが、スプリント(一種のマウスピース)です。とりあえず上顎か下顎にスプリントを取り付け、左右の奥歯で同時にカチカチ咬めるように。又、咬みしめたままで下顎がスムーズにギシギシ滑って動ける状態を、赤や青色の薄い咬合紙というものを使って、慎重に調整をして作り上げます。この調整の完了したスプリントを使う事で、体や顎の不調が改善されたら、この不調は咬み合わせが原因だと判定できるのです。そしていよいよ本格的な治療です。スプリントを先ずはめておいてもらい、外した直後に先程の咬合紙をカチカチ左右の奥歯で咬んでもらうと、飛び出している歯だけに、赤や青の色が付きます。そこを慎重に少しずつ調整していき、スプリントを入れた時と、外した時と同じ状態になれば治療完了です。少しずつですが、体や顎の不調は改善されていきます。
簡単に判りやすく説明したつもりですが、いかがでしょうか。兵庫県歯科医師会の調査結果では、七十歳以上の方々の医療費と残存歯には密接な関係があり、残っている歯の本数が少ないほど医療費は高くなり、入院日数も長くなっています。老後を健康で快適に過ごすためには、自分の歯を自分で守る事が大切です。「どうか一本の歯の痛みをきっかけに、自分自身への愛に目覚めて下さい。時間やお金に余裕がないと、自分自身に言い訳して、決して応急処置だけで終わらないで下さい。」
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