☆バイオフィルムって知ってますか?☆
ムシ歯や歯周病の原因になる歯の表面のネバネバの事を「バイオフィルム」といいます。今月は、あなたにこの「バイオフィルム」についてお話します。お口の中は暖かくて湿っていて、そして時々栄養が入ってくる、だからバイ菌達のかっこうの住み家になると、あなたはそう思っていませんか?ところが、どうもそれは間違いのようなのです。口の中は実は悪玉菌にとってむしろ住みにくい環境なのです。唾液や体液の中には、私達が考える以上の抗菌物質が含まれていますし、下手をすると細菌は、すぐに洗い流されて消化管に送り込まれ、そこで強い酸により殺されてしまいます。ようやく見つけた、でこぼこも、ともすると他の菌に占領されて、なかなか住みつける状態ではありません。まして浮遊しているだけでは、生体からの貧食細胞にすぐに食べられてしまいます。
しかし、これからが、悪玉菌達の本領発揮です。彼らは実に巧妙な方法で歯の表面に取りついていきます。まず手始めに、他のバイ菌を味方につける事を思いつきます。他の菌も取り込んで、お互いが居心地よく住めるような一種の共同体を作りあげるのです。やがてこの共同体は、次第に合体してゆき、集合体を形成します。このような集合体を「細菌バイオフィルム」と総称します。これが歯や歯肉にさまざまないたずらをする成熟したネバネバ(プラーク)の正体です。悪玉菌はこの鎧の中で、口腔という過酷な環境にしぶとく適応しようとしているのです。うまい仕組みになっているでしょう。ひとたび、このバイオフィルムが形成されると、バイ菌は、そのバイオフィルムの中に埋め込まれた状態になり、かなり栄養条件の悪い状態でも生存が可能になります。さらに、このような生存状態は、抗生物質や抗菌剤の薬から、物理的に保護され、さらにそれに対して抵抗性をもつだけではなく、生体からの攻撃にも抵抗性も示すようになります。つまり「ムシ歯とは、バイオフィルム内にとどまった酸が直接、歯を溶かしていく病気」「歯周病とは、人の体から出てきた防御・攻撃の善玉細胞が、バイオフィルムを分解出来ずに、歯肉にダメージを与えられた状態」といえます。ちなみに、このようなバイオフィルムは、他の医学領域では、ペースメーカーや尿路や血管内カテーテルにも観察され、やっかいな感染症の原因になるといわれるといわれています。さて次回では、このバイオフィルムをどうやって取り除いていくかについて、お話したいと思います。
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